新型コロナウイルスワクチンの陰謀論について

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陰謀論を信じる人のイラスト

気が付けば、当ブログの開設から3カ月が過ぎました。当ブログを購読していただける読者も付き、本当にありがたいことです。次は二桁を達成したいものです。読者さま、更新がない日も、アクセスしてくれてありがとうございます。これからも「好きな事を書いていく」のブログ名の通り、好きな事を自由にどんどん書いていこうと思います。引き続き、当ブログをよろしくお願いします。

 

さて、この前の日曜日、僕はモデルナワクチン2回目の接種を受けました。すると日曜夜から副反応の高熱が2日間続き、本日夕方、やっと熱が引いて、こうしてブログを書けるほどまでに回復しました。この事から分かる通り、僕はワクチンを打つ派であり、実際に2回接種を済ませたのです。ワクチン接種の副反応は以下の通りで、僕は主に頭痛、発熱、寒気が起こりました。

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新型コロナワクチンの副反応

しかし、2回ワクチン接種を済ませても、コロナウイルスに感染自体はするという。じゃあ何故ワクチンを打つのかというと、コロナウイルスの発症を約95%予防し、なおかつ重症化を防ぐ効果があるから。現在、コロナウイルスの流行により、逼迫している医療のリソースを減らせるのだ。

ところが、ワクチン接種に関して、懐疑的な人々がいる。その方々は、ワクチン接種に関して「5Gに繋がる」「命の危険がある」「打つ打たないのは自由だ」などという。5G接続はそもそも医学的にも科学的にもまったく根拠がないので無視するとして、命の危険がある、この陰謀論を信じるのはさすがに論理が飛躍し過ぎている。

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ホッブズ著『リヴァイアサン』より

前述した通り、ワクチン接種は世界各国の国家事業となっている。なぜか。上記のホッブズ著『リヴァイアサン』の挿絵を見て分かるように、国家を形作るのは人民一人一人の姿である。またホッブズは、国家の役割は人民の安全を確保することだ、と明言している。国家は人民たちの最大の関心である安全を保障できなければ、人民の集合体を維持できなくなり、国家として成り立たなくなるのである。

そして、今、コロナウイルスの危機に対処することが、世界中の国家に課された使命なのだ。それ故に、国家はワクチン接種を奨励する。新型コロナウイルスワクチンの効能は、既に数多くの実験で証明されている。副反応のリスクと天秤に掛けても、接種を推し進めるべきだと判断したからこそ、世界各国で接種を奨励されているのだ。

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世界各国のワクチン接種状況 (2021.6)

もし陰謀論が真実で、ワクチン接種が人々に害をもたらすものであるならば、その情報を入手した(「ワクチン 有害」のGoogle検索で簡単に見つかりますね)先進国の幾つかは国民に接種させないはずだ。ところが、共産主義国家である中国やロシア等から、資本主義国家のアメリカやイギリス、日本等においても、一致してワクチン接種は奨励されている。共産主義と資本主義とが、同じ手法を取るということは、ワクチン接種の有効性と安全性が保障されていると考えていいだろう。

したがって、「命の危険がある」は、それが真実なら世界各国で接種を進めるはずがないのだ。先日、実際にあった異物混入のエラーは起こり得ても、総体では安全なものであるという認識に変わりはない。なぜなら、ワクチン接種を危険なものであるという考えに立つと、世界中の首脳たちが連携して、自国民をわざと危険に晒している事になる。そして、そんな重大な裏情報が、インターネット中に転がっている。そんなアホな事がありえるでしょうか。万が一それが真実だとしたら、世界各国のトップ層たちが、その程度のレベルなら、人類はここまで発展していない筈です。

 

そして、「ワクチンは危険」と主張する陰謀論者の味方をしてくれる人は、陰謀論を広めて得をする宗教団体および陰謀論サークルか、同じ陰謀論者しかいない。陰謀論に傾倒するだけで、この広い世界で、一気に味方がほんの少しの人たちしかいなくなる。しかも、その人たちは、陰謀論者を救うどころか、「コロナウイルス予防の為の水素水を30000円で売ります」、「5G接続防止のステッカーを50000円で売ります」などと不安を煽り、お金を巻き上げることしか考えていないのである。

家族、友人から孤立し、陰謀論を広めてお金を儲けることしか考えていない人たちの近くに、わざわざ自分の身を置く。そういう、人生ハードモードな状況を作らなくていいと思うのです。

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新型コロナウイルスの後遺症

次に、「ワクチンを打つ打たないのも自由だ(私は打たない)」というのも、よく聞きますよね。これもまた陰謀論者が中立を装った発言です。前述した通り、ワクチンはコロナウイルスの発症を95%防ぎ、重症化を予防する効果がある。つまり、国民全体がワクチン接種をするほど、医療のリソースを予防的に減らせる事になるのだ。打つ打たないは建前としては自由だが、出来るだけ打った方が自身の利益にもなり、国益にもかなっているからだ。

そして、もう一つの理由として、新型コロナウイルス後遺症の厄介さがある。ワクチンを打たずにコロナウイルスに罹患し、そこから快復したとしても、上記画像の後遺症をずっと抱えるリスクがあるのだ。対して、ワクチン接種のリスクはどうだろうか。注射による重篤なアレルギー反応を起こすリスクのある方々を除き、主に以下に絞られる。しかも、それはほんの数日で快復するのである。

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ワクチン接種の主な副反応

インターネットに流布する陰謀論を見聞きし、ワクチン接種をためらっている方、どうかコロナウイルスの後遺症とワクチンの副反応を天秤にかけてみて下さい。そして、どちらの方がマシか、冷静に考えてみて下さい。ワクチン接種をしなかった結果、コロナウイルスに発症し、後遺症を抱えるという、人生ベリーハードモードの道を選ばなくてもいいと思うのです。

なぜわざわざ僕が、ワクチン陰謀論について、ここまで執拗に誤りを訂正させ、接種を奨めるのか。それは友人や後輩の何人かがワクチン陰謀論に傾倒している事が、先日、分かったからだ。友人同士の集まりで、ワクチン接種の話題になった時、陰謀論者の彼は憎々しげに「死ぬ危険がある」「俺はワクチンを打たない」「打つ打たないは自由だろ」と吐き捨てるようにいった。

その場では、陰謀論を信じる奴が身近にいたんだ、と呆気にとられてしまい、「打つ打たないは自由だろ」という、彼のさももっともらしい発言に流され、そのまま有耶無耶となってしまった。

そして、陰謀論者の大学の後輩もわざわざLINEで、「先輩、ワクチン接種はしないで下さい。危険です。これを見て下さい(以下、陰謀論のURL)」と連絡が来て、それに対して僕が「ありがとう、でももう打ったから」と返事したら、二度とメッセージが返ってくることはなかった。

 

そんな事があり、僕もブログを運営する身として、なにかしら彼らに対してアンサーを書かなければならないような気がしたのだ。よって、既にワクチン接種をした方、ワクチン接種を準備している方にとっては、退屈な記事であったろうと思う。陰謀論に傾倒している方にとっては、自身の考えを攻撃されているようなストレスを感じたかもしれない。ただし、それは考え方ひとつで変わるのであり、世界中から孤立しているように感じるあなたの思い込みは、ワクチンを打つ事で解消できるのだ

だから、どうか陰謀論による分断の工作ではなく、ワクチン接種の連帯の取り組みに参加して欲しい。それがあなたの為になり、周囲の人々の為になり、日本の為になり、世界の為になるのだ。以上が、ワクチン接種における僕のスタンスである。

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分断ではなく連帯でウイルスに打ち勝とう

 

ウマ娘を救いたい 第三回

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「アオハル杯~輝け、チームの絆~」 公式サイト

やはり、Cygamesはウマ娘の新モード開発に注力していた。「今、新モードを開発しているよ」という公式の予告や、その時期は夏か年末かという噂はちらほらとあったものの、まさかハーフアニバーサリー中にぶつけてくるとは思わなかった。

僕はこの発表で、Cygamesを大いに見直した。

まさに執念としかいいようがないだろう。ウマ娘のサービス開始日からキャラ追加やイベントを実施し続けながら、その一方で新モードも作る。ここまで流行ったウマ娘のコンテンツを簡単に終わらせてたまるか、というCygamesの本気がうかがえる。

このシリーズの前回記事「ウマ娘を救いたい 第二回」で僕は、Cygamesを根性というゴミを信者相手に売りつける悪徳企業と叩いた。

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ガチファン相手に根性というゴミを売りつける悪徳企業の図

しかし、筋金入りのファンから課金を搾り取る一方で、Cygamesはコンテンツを長続きさせるための新モードをせっせと開発していたのだ。僕のような微課金ユーザーからすれば、これはもう悪徳企業から優良企業に評価を改めなければいけない。

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新サービス追加でユーザーを幸せにさせる優良企業の図

なぜ、ここまで手のひらを返すのか。それは開発側のCygamesにも、現状のウマ娘の問題点が分かっているという強烈なメッセージの発信に他ならないからだ。ユーザーが現状のサービスに対して不満があるのなら、企業はその要求に応じて新サービスを作る。これって企業とユーザーの理想的な関係なのだ。

もちろん、最初に出したサービスでユーザーをすべて満足させる。企業はそれを目指すべきだ。しかし、商品開発は、世に出るまで結果は分からない。そしてウマ娘も、キャラクターデザインやストーリー、世界観の完成度が優れていたからこれだけ多くの人に受け入れられ、ヒットしたのだ。

しかし、ウマ娘にも問題点があった。

一回の育成に時間が掛かるし、失敗した時の心理的負荷(ストレス)が大きいのだ。

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死んだ魚のような目で、ウマ娘のデイリーを消化するユーザーの図

ウマ娘をプレイするユーザーの目標は、強いウマ娘を作る事。Cygamesは、これに対してジェミニ杯やレオ杯などのPVPイベントで、強いウマ娘の条件を変動させ、ユーザーの目標を用意した。しかし、その目標の要求値を満たせるかどうかは、ゲーム内乱数の影響が大きいのだ。

ウマ娘の育成には、ストレスフルな要素に溢れている。

①ランダムで体力やる気が下がる、「なまけ癖」などのバッドコンディションがつく

②スピードに練習が集まらない

③キタサン、スパクリ等の確定イベントが完走しない

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これらの悪条件のうち、1つでも満たしてしまうと、そのウマ娘はとても対人戦に出せるような出来ではなくなってしまう。特にグレードAリーグの決勝に集まるようなエースたちは、これらの悪条件をくぐり抜けた上に課金もしているため、並大抵のウマ娘ではかなわないのだ。

そして、試行を繰り返す度に、ユーザーの精神は消耗される。編成デッキも想定レースに合わせた、手持ちのサポカを強い順に当てはめていくだけ。あとは悪条件を引かずに、上振れを引き続ける運ゲーに身を任せるしかない。

そんなゲームの拘束時間が1プレイ30分なのである。

その徒労に耐え切れなくなったユーザーは、この競争を降りるようになる。すると、彼にとってウマ娘は、時間や情熱を費やすべきでない退屈なゲームとなるのだ。そして彼は、デイリー消化のためにログインし、サークルで靴を交換し、マックィーンで一年目のレースに出ずにマックEーンを作り続ける……新しい要素が来るまで。

ところが、ついにその新モードが来る。聖書風にその喜びを記すとこうだ。

サイゲ神は、我々を見捨てていなかった。しかも、下々のユーザーの心理状態まで把握しておられた。(ウマ娘記 8.28)

 

Cygamesには、現行のシステムのままでは、離脱者が増え続けることが分かっていた。多数のユーザーが競争から降りるようになると、売上も下がる。すると、コンテンツは徐々に死に近づき、やがてウマ娘の流行は終わる。

そうはさせまいと、Cygamesの大型アップデート追加。その真価が明らかになるのは、8月30日である。僕のような微課金勢などは、新要素追加の喜びのあまり、理事長代理を完凸するための財布の口もついつい緩んでしまうかもしれない。まったくCygamesはとんでもない企業である。

次回、「ウマ娘を救いたい 第四回」ではその新モードのレビューをする予定です。乞うご期待。

 

youtu.be

メンタリストDaiGoは何故「炎上」したのか

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彼の家は裕福だった。おそらく彼の父親は高学歴のエリートであり、彼の母親も元・薬剤師だったことから、一家の高学歴志向はごく当然のように形成されてきた。彼の両親は、もし自分たちに子供が出来たら、必ず名門大学に入るだろうと心の底から信じて疑わなかった。彼はそんな一家の長男として、この世に生を受けた。

彼の父親はとても忙しかった。彼が幼少の頃は、昭和末期の好景気が終焉を迎える頃であり、労働基準法も改正される前だった。企業の管理職などは残業や休日出勤が当たり前の日々だったから、少年時代の彼は、父親と過ごした思い出があまり無かった筈だ。家の内外で、もっぱら彼の相手をしていたのは母親だった。

彼の母親は、エリートで仕事一筋な父親に惚れられるほどの、美貌と知性を兼ね備えた女性だった。1970~1980年代の日本において、薬剤師の職に勤めていた彼の母親は、当時の日本人女性全体の中でもトップクラスの給料を得ていた筈だ。したがって彼の母親も、もしかしたら彼の父親以上に、過酷な学歴競争をくぐり抜けた一握りのエリートなのかもしれないのだ。

 

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そんな母親を、彼は愛していた。彼の母親の育児方針は、子供の個性を尊重し、好きな事は存分にやらせることだった。ただし、勉強を3時間やったら、等と条件は付けていた。少年時代の彼には、時々母親の言う「良い大学に行ったら(今のお父さんやお母さんのように)、良い生活が出来るよ」という言葉の意味がよく分からなかった。けれど母親が、彼の個性を尊重し、彼のすべてを受け入れてくれるのが唯一の救いだった。彼は学校でいじめられていたからだ。

彼へのいじめは中学二年生まで続いた。学校内で彼は日常的に嫌がらせを受け、人格を否定され、生きる事さえも苦痛だった筈だ。しかし、そんな彼を救ってくれたのは、やはり母親の存在だった。ある日、いじめグループの一人が、彼の母親を話題に出し、彼の前で笑いものにした。その瞬間、彼の全身はカッと熱くなった。ちょうど工作の授業中だったので、目の前の鉈を掴み、そいつ目がけて投げた。それがもし命中していたら、彼は現在の彼になり得なかっただろう。

幸いにも鉈は逸れ、後ろの壁に当たった。教室中は大騒ぎになり、そして、次の日から彼へのいじめはなくなった。彼は完全に勝利したのである。この成功体験は、彼を大きく変えた。彼は、「世界は、自分の行動ひとつで変えられる」ことを、空虚な知識でなく、真に理解したのだ。

 

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彼の母親への敬愛は、ますます根深いものとなった。少年時代の彼には友達と呼べる者がおらず、彼にとって人との交流とは、父親や弟たちとのコミュニケーション。そして残り大半は、母親の存在がすべてだった。彼は、仕事で忙しく常に不在がちで、自分や弟たちの世話を、すべて母親に丸投げしているように見える自分の父親を憎んだ。

高校生になった彼は、母親に「東大に入る」と宣言した。彼のその言葉を聞いた母親が、心から嬉しがるのを見て、彼も心底から嬉しかったに違いない。それから、彼は本気で勉強に励んだ。しかし、現役で合格することは叶わず、彼は一年浪人する事になった。浪人中も死に物狂いで勉強し、決して手を抜かなかった。彼は自分が東京大学に入ることを固く信じていた。

しかし、センター試験を境に彼の運命は大きく変化する。結局、彼の東京大学進学の夢は、二年連続で叶わなかった。失意の彼に、追い討ちを掛けるような事実が明らかになった。彼の母親が、内緒で慶應義塾大学にこっそりと出願していたのだ。そして母親はそれを伝えた上で、彼を励ますように「慶應大学も良い大学だから」と受験を勧めた。

その事実を初めて知らされた時、彼は深い絶望に襲われたに違いない。

ああ! なんのために自分はここまで頑張ってきたのか。父親以上のエリートとなり、愛する母親を、憎むべき父親の管理下から救い出すためではなかったか。それが当の母親から、父親を越える唯一の機会を奪われるとは! 彼の深層心理はそう喚いていた。

しかし、彼は母親に対し、ゆっくりと声を絞り出すようにしていった。

「そうかい。母さんが、そうしろというならそうするよ」

そして、彼は慶應義塾大学の入試試験に合格し、進学した。

 

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慶應大学入学後の彼は、自身の学歴コンプレックスを自覚し始めていた。しかし「学歴コンプレックス」と形容していたはずの、彼のコンプレックスの正体はもっと複雑なものであり、エディプス・コンプレックスやカイン・コンプレックス、さらに数年間のいじめ被害による自己否定感も絡み合い、彼のメンタルに多大な苦悩を与えてきた。

この彼の幾層にも積み重なったコンプレックスを解消するには、人生の成長過程で割り切っていくか、成功体験を自身の手で掴み取るしか無かった。彼はどうにか後者の道を模索していた。そんな最中、彼はMという男性と出会う。Mは彼の対外能力の多寡よりは、成功を心から渇望するバイタリティの高さに注目していた。

「なあ、おれと組まないか。君を2、3年で有名にしてみせる」

そして彼は、Mの全面プロデュースを受けて表舞台に登場した。Mの薫陶を受けた彼は、イギリスのメンタリスト、ダレン・ブラウンに憧れる若きパフォーマー「メンタリストDaiGo」としてテレビに出演し、やがて世間に名を知られるようになった。

 

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しかし、「メンタリストDaiGo」としてメディアの脚光を浴びた彼の成功は、彼のコンプレックスを解消させるどころか、かえって肥大化させてしまった。テレビに出て鮮やかなパフォーマンスを披露する彼の姿は、Mが脚本を描き、演技指導し、番組出演者との共同作業で演出した、まやかしの彼だったからだ。

この時期の彼は「僕は本当は研究者になりたいんだ」と母親にだけは、複雑な心境を漏らしていた。そこに、彼のずるさがあった。彼の望みは、父親を越えるために、かつての父親以上に忙しい人間になりたがった。しかし、彼はテレビで成功しながら、母親の前では夢を追いかける子供として振る舞った。「忙しい」と口にしながら、母親に別の夢を語る彼。それは屈折した彼のコンプレックスが、これまでの生涯のなかで最も甘美に満たされた瞬間ではなかったか。

ところが、彼がその安らぎの時間を過ごすには、あまりにも期間が短すぎた。彼の母親が病気に倒れたのだ。「仕事で忙しいから」が口癖になり、実家にあまり帰らなくなった彼。そんな彼の邪魔にならないようにと、母親は自身の病気をぎりぎりまで隠していた。彼がすべてを知ったのは、いよいよ母親の病気が末期の状態になってからだった。それから間もなく訪れた母親の死は、彼に大きな衝撃と喪失感を与えた。

 

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……。

母親の死から立ち直るにつれて、彼はテレビでの成功を空虚なものに感じ始めていた。

テレビ上の「メンタリストDaiGo」のパフォーマンスは、Mが自分のやりたかったことをおれに押し付けたものであり、いや、そもそもおれは自分の力で成功したかったのだ。イヤ、オレハトテモ優秀ダカラ、ヒトリデモ成功デキタハズナノダ

残念ながら、彼のこの鬱積したコンプレックスを慰めた上で、人生の善き指針を示してくれる相手はもうこの世にいない。そして、いよいよ燻っていた不満が限界に達した彼はMと袂を分かつことを決意した。彼はMに自分はテレビでの仕事を辞め、活動の場を別に移すと宣言した。彼との仕事が軌道に乗ってきたMは、反対したものの彼に翻意する気がないと知ると、最終的にはタッグ解消を受け入れざるを得なかった。

別れの最後の会話でMは、立ち去ろうとする彼にきいた。

「これからきみは、いったい何をやるつもりなんだ?」 

彼は半笑いを浮かべながら、振り返っていった。

「まあ見といてくださいよ。2、3年で今より全然成功しますから」

 

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それからの彼は、Youtubeやニコニコ動画等での配信業をメインに活動し始め、数年間でYoutubeのチャンネル登録者数200万人を突破し、ニコニコ動画は月間サブスク数が全体配信者の中でトップになるなど、対外的には成功者となった。

彼のやった事は自分が読書家であることを活かし、海外の研究論文を彼の動画内で自己啓発やハウツーものに変換することだった。いわば彼は、知識を仲介する架け橋的役割となったのだ。

そういう風に、彼は自己演出した

実際には、彼には特定の情報提供者がいた(鈴木祐)。彼は、その人が書いた自己啓発・ハウツー翻訳記事を丸ごと借用しているだけで、彼自身は原本にあたる学術論文を読み込んですらいなかった。

彼が巧妙なのは、知識の仲介人のさらに仲介役という本来なら不要なはずの彼のポジションを、上手く覆い隠すためのトリックを随所に散りばめていた事だった。

彼が配信に使用している部屋には、巨大な本棚がある。数多く並べられた蔵書を背景に「○○大学で行われた研究があって」と引用する彼の姿は、その画面内の情報でしか彼を知らない視聴者にとっては、まるで知識人のように見える。しかし、それは彼という権威主義者が、巧みに作り上げた虚像に過ぎなかった。

彼は殆どの動画内で、かなり早口にまくし立てている。早口で喋り続けることによって、視聴者に疑問を挟まさせる隙を与えない。彼が喋る内容に、彼自身の体験による補足が一切無かったり、やっている事が単なる三次資料編集で非常に薄っぺらく聞こえていても、なるべく気付かせないように早口でカバーしているのだ。

 

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ところが、彼のその不断の努力にも関わらず、ここ一年間の彼のYoutubeの再生回数は伸び悩んでいた。いや、低迷していると言ってもよかった。約250万人ものチャンネル登録者がいるのに、投稿動画の再生回数が数万程度になるのも珍しくなかった。

彼は焦っていた。

目標実現のためにはどんな努力も惜しまない彼の事だから、この苦境を打破するアイデアを導き出そうとした筈だ。悩みに悩んで出した彼の結論は、過去の成功体験を追い求める事だった。

彼が求めた過去の成功体験、それは何か。かつて若きメンタリストとしてMと組んでテレビで活躍した成功体験か? 違う、彼は自力での成功を求めて、Mから独立したはずである。研究論文オタクの鈴木祐から翻訳論文のネタを借用して動画投稿活動を続けることか? いや、その成功はもう既に色褪せているはずである。

すると、残りは、学校で彼が反撃し、集団いじめを止めさせた事例しかなかった。

……。 

 

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そして、彼は「炎上」した。「ホームレスはいない方がいい」「生活保護に税金を使われたくない」などと公の場で発言し、彼は世の倫理や社会福祉に対して、中指を突き立てたのだ。彼の持つ影響力を考えると、社会は彼の行動を看過できるはずがなかった。あらゆる著名人、団体、市民が、一斉に彼に注目し、攻撃した。

この「炎上」の状況を作ったのは、意図的か、偶然か、は彼にしか知りようがない。少なくとも彼のYoutubeチャンネルへのアクセスは増えた。

さらに、彼の視点から見れば、今の状況はかつての集団いじめの時と同じように映る。とすれば、次に彼が取る行動は、いじめから抜け出すために、鉈に代わる武器を彼への攻撃者に投げるかもしれないのだ。その新たな武器とは、訴訟である

現在の彼は「炎上」に対する二回目の謝罪以降は、YoutubeやTwitter等のSNS上で沈黙を保っている。この状態が一カ月か三カ月か半年ぐらい続き、世間が彼の「炎上」を忘れるようになった頃、彼が急に行動を起こす。彼はかつての誹謗中傷の被害を訴えて、法的責任を取らせるための訴訟を次々と起こしはじめる。現在の沈黙は、その為の準備期間なのだ。

しかし、社会にとって一番望ましいのは、彼の鬱憤晴らしによる訴訟ではない。

彼が真に「炎上」事件を反省し、良質なメンターとして若者に善き指針を示してくれるメッセンジャーに変わることだ。彼の母親が、彼や彼の弟たちを立派に育て上げ、成功への道を導いたように、その姿を間近で見てきた彼にもそれが出来るはずだ。

彼の今後がどのように変わっていくのか、それが良き未来になることを祈りつつ、筆をここで終える。